【千年幸福論】amazarashi(1st ALBUM)


2011年発売のアルバムです。アーティストについても作品についても、何も知らないところから始まった出会いだったので、そのまま感想を書きます。



最近のロックバンドのアーティストにしては、めずらしい歌唱なのが印象的です。ヴォーカルの秋田ひろむの年齢がわからない(非公開のようです)のですが、わたしの耳にはもうちょっと上の世代のヴォーカリストたちによく聴かれた歌唱です。もしかしたら、30台後半なのかもしれないなぁと思ったりしています。今現在10台、20台の年齢のヴォーカリストたちは、たぶん、こういう歌い方はしない。とわたしは思っている。


全体的に「生きる」ということについて一生懸命に考えている、あるいは向き合っている歌詞が、腹の底からの声になって叫ばれ、歌われ、問われている。


そのむき出された言葉や、問いを、もう少し若かった頃のわたしなら真剣に考えて、考え込んで、そして悲しくなったり、切なくなったり、行き場を失ったりしていたかもしれないな、と今のわたしは思うのだけど、今のわたしは悲しくも切なくも行き場を失くした気持ちになったりもしない。なぜならもうそういうことを真剣に考えなくなったから。「生きる」ということについて。今のわたしが聴いて思うことは、「そんなことはもう考えた」。


もちろん、このアルバムの中にある問いや解答や表現すべて、すでに自分が考えたことのあるものだ、などということではありませんよ。もちろんそんな意味ではありません。全体として「そういうことは考えた」ことがあるし、たぶん誰もが考えることですよね。


そんなことはもう考えた。そう、誰もがそうであるように、わたしも考えに考えました。でももう諦めたのです。答えを出すことも、答えがあると信じることも。だからこうして今もまだ自分の前でこうして叫び続け、問い続けている人がいると、うー。と唸ってしまう。いいなって思う。羨ましいなとも思う。でも、わたしはもうやだな、とも。


それでもこうして彼らの声に耳を傾けてしまうのは、同じ問いを持っていたからではなく、その先にある答えに同じ美しさや優しさがあることを望んでいるからなのだろうなと、そんなことを思いながら聴いています。いいアルバムだよね。


千年幸福論

千年幸福論

1.デスゲーム 2.空っぽの空に潰される 3.古いSF映画 4.渋谷の果てに地平線 5.夜の歌 6.逃避行 7.千年幸福論 8.遺書 9.美しき思い出 10.14歳 11.冬が来る前に 12.未来づくり