2022-01-01から1年間の記事一覧

『その可能性はすでに考えた』井上真偽

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)作者:井上真偽講談社Amazon事件当時、少女は小さな村で暮らしていました。住民の数は33人。31人の大人と、少女と、高校生くらいの少年だけです。33人全員がそれぞれの仕事を割り当てあれ、家畜を飼って、ほぼ自給自足…

『メルカトルと美袋のための殺人』麻耶雄嵩

メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫)作者:麻耶 雄嵩集英社Amazon 本格ミステリファンにとっては有名な探偵だそうです。メルカトル鮎。めるかとるあゆ。そして事件の語り手は、メルの友人である美袋三条。みなぎさんじょう。「美袋」の読み方をなかな…

『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン

掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫)作者:ルシア・ベルリン講談社Amazon もしもわたしが映画を撮るのだとして(たぶん撮らない)、コインランドリーでの一幕があったなら、洗濯が終わるのを待つ登場人物の手には必ずこの本を持た…

『現代日本政治史』大井赤亥

現代日本政治史 ――「改革の政治」とオルタナティヴ (ちくま新書)作者:大井 赤亥筑摩書房Amazon 安保法制で何をもめていたのか未だによくわかっていない、くらいの政治知識量の人が読んだ感想文です。本書の目的のひとつは、現代日本における「政治の対立軸を…

『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』島田荘司

漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件 (光文社文庫)作者:島田 荘司光文社Amazon 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 コミック 全4巻セット作者:島田荘司,嶋星光壱秋田書店 Amazonとても楽しい小説でした。作家・島田荘司の読書家ぶりが伝わってくるような作品でした…

『人間腸詰』夢野久作

人間腸詰 (角川文庫)作者:夢野 久作KADOKAWAAmazon 人間腸詰、って。。やめましょうやめましょう、想像せずに読みましょう。想像せずに読めば案外スラリと楽しめます。全8編の短編集。登場人物も場所も繋がりのないそれぞれ別の話で、下手なたとえをすると、…

『一の悲劇』法月綸太郎

一の悲劇 (祥伝社文庫)作者:法月綸太郎祥伝社Amazon 小学一年生の男の子が誘拐されます。しかし犯人が身代金を要求したのは、別の家族でーー。身代金を要求された家族と、我が子が誘拐された家族。物語の語り手は身代金を要求された側の父親で、この人物が身…

『私はあなたの瞳の林檎』舞城王太郎

私はあなたの瞳の林檎作者:舞城 王太郎講談社Amazon全3編の短編集3編とも、大人ではない年齢の男女が主人公で、「教室」から線をめいっぱい伸ばしていった広がりで舞台もできていたように思います。物語は登場人物たちの晴れ晴れとした会話に推進されて、恋…

『少年』川端康成

少年(新潮文庫)作者:川端康成新潮社「お前の指を、腕を、舌を、愛着した。僕はお前に恋していた――。」裏表紙の作品概要がこの調子で始まるので、肉感的な物語を想像しましたけれども、思いのほか清々しかったです。彼らの抑えがたい衝動を吸収するのに、さ…