千円札のひと


とても気にっているワンピースを着てレストランに行った日。
↓この日ね。


会計のときに、シェフが遊び心で、旧千円札を出してくれました。たまたま手に入ったのでしょうね。


旧千円札、覚えてますか。誰が印刷されていたか。



そう、夏目漱石です。


わーすごい。わたし、この人が大好きなんです。と思わず、声高らかに言ってしまうと、シェフは少し、きょとん、としていました。え、どうしよ。わたしまたなんかへんちくりんなリアクションをしたのかな、でも変じゃないよね?などと思っていたのですが、考えてみれば、たとえばわたしが誰かに野口英世の千円札を出して、「わーすごい。わたし野口英世が大好きなんです」と言われたら、たしかにきょとんとするだろうな、と思いました。そうですよね、好きじゃない人は、気にしてないですよね、お札に印刷されている人のことなんて。


でもわたしは夏目漱石のことが好きなので、旧千円札といえば、夏目漱石なのです。もし、一万円札の福沢諭吉夏目漱石になって、その後、懐かしの旧一万円札として福沢諭吉を出されたら、「あ、夏目漱石じゃないっ!」って言うと思います。「福沢諭吉だ、なつかしー」とは言わないだろう、と。



夏目漱石。わたしが特に好きなのは『坊っちゃん』。
感想文はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/u-book/20090904



ラストシーン、清(キヨ)の墓で終わるところがとてもよくて。あの読後感はなんて言ったらいいか、そうそう、「となりのトトロ」みたいな。「となりのトトロ」、観たことあります?

となりのトトロ」のメイちゃん、わかります?たとえて言うなら、大人になったメイちゃんが、トトロに出会ったあの洞穴に戻ってきたときのような気持ちなんです。穴の中に続く小さな小さな道を、大きくなったメイちゃんは、身体を押し込めるようにして土や葉っぱをくっつけながら進んでいくんです。そして洞穴に落ちるんです。でもそこには、トトロはもういなくて。そりゃそうか。トトロはいないよね、会えないよね。そう思って引き返そうとしたときに、ふと、どんぐりを見つけるんです。わたしはそういう気持ちになります。清の墓。