膝蓋骨脱臼骨折の記録13 <手術とは変身であるの記>

手術日(4月8日/金)


朝から緊張。手術は午後からの予定ですが、すでに飲食は禁止されています。胃に食べ物が残っていると逆流してきちゃう可能性があるのですって。でも食べちゃいけない、飲んじゃいけないって言われると、食べたくなるし飲みたくなる。


飲んじゃえ。えいっ。とふだんのアライグマなら思うところが、この日はおとなしくしておりました。なぜならもうすでに、まな板の鯉になる準備を始めていたからです。
アライグマとはいったんお別れで、鯉です、鯉。


手術着に着替えて看護師さんのお迎えを待ち、時間になると車椅子で運ばれます。手術室まで来たら、あとは唱えるだけです。わたしは鯉、と。



ただいま変身中変身中変身中変身中。。。。。。



目が覚めたときには、頭の上で医師たちの笑い声がしていて、なんの話だろうなと思う間もなく痛みが襲い掛かってきました。
痛いのです、足が痛い。痛い痛い痛い。あまりにも痛いからまだ手術中なのだと思ったら「終わりましたからね」と言います。


終わった?こんなに痛いのに?


わたしは信じがたい気持ちになりました。だって「痛い」なんて聞いていません。もちろん無痛で済むとは思わないけれど、包丁で指を切って絆創膏を貼ったあとの痛み、というのではないのです。めちゃくちゃ痛い。痛い痛い痛い。しかし終わったのならこの痛みはじき(数分後)に治まるのかと思いきや、どんどん痛くなる。ベッドに乗せられたまま病室まで運ばれる間に、身体がガクガク震えだす。怪我をしたときと同じです。わたしはまた看護師さんに尋ねました。「これはよくある症状ですか?」と。
救急車で運ばれた際に同じ質問をしたときは「大丈夫ですよ」とだけ言われて、原因はわからずじまいだったのですが、このときは「たぶん身体がびっくりしているんだと思いますよ」との回答を得て、それで納得しました。はい、たしかにわたしはびっくりしています。


手術後の痛みは、個人差はあるにせよ稀有なものではないようで(ただし、身体が震えだすという人はさほど多くはなさそうだと看護師さんたちの反応をみて思いました)、一晩続きました。痛み止めの薬も飲んで、座薬も入れてもらって、痛いよ痛いよと唸りながら夜が明けるのを待ちました。


今思い返すと、誰に何を言われたわけでもないのに、朝までの辛抱、と信じていたことを不思議に思います。実際、翌朝までにある程度の痛みはおさまりました。よかったよかった。過ぎ去ってしまえば「ひとつの経験」に過ぎません。


とっととアライグマに戻ります。鯉なんてまっぴら。