ラッキーパーソン


朝、職場のロッカールームに入ると、いつも先に来ているmelaちゃんに会います。更衣室を兼ねているので隣同士で着替えるのですが、朝のわたしたちは、あまり会話はしません。挨拶はするけれど、全体的な雰囲気としては、なんか来たな、なんかいるな、くらいのあまり仲の良くなさそうな反応です。それが今日は違いました。ロッカールームに入ってきたわたしと目が合ったとたん、melaちゃんの顔がパァッと輝きました。「なんか来たな」が「uubさんが来たっ♪」に昇格していました。なんだなんだ、なにが起きたのだ。


はっきりわかるくらい表情に出ていたので、ちょっと驚いて、思わず「ん?なに?何かあったの?」って聞いたら、melaちゃんの輝いていた目が照れ隠しのようにちょっとうつむき加減になって「わたしの今日のラッキーパーソンが来た」って言うんです。「ラッキーパーソン?わたしが?」「はい」


わたしはてっきり今日の蟹座(melaちゃん)のラッキーパーソンが魚座(uub)だったのかなと思って、melaちゃんに「魚座?」って聞いたら、「いえ、わたしは蟹座です」と、やはり朝の会話はかみ合いません。


一度ちぐはぐ感を正します。


改めてmelaちゃんの説明を聞くと「いえ、ラッキーパーソンは魚座じゃないんです」と言います。「じゃあ、なにがラッキーなの?」と尋ねると、melaちゃんはくるりとした瞳でわたしを見つめて言いました。


「今日のわたしのラッキーパーソンは、すっぴんの人です。」


。。。。。。


いやいやいや。わたし、すっぴんじゃないよ。ちょっとはしてるんだよ。そうわたしは訴えたのだけど、melaちゃんは「いえ、ぜったいuubさんのことです」と言い張ります。いやいやいや。ちょっとしてるし。ちょっとだけど。


と、最初は釈然としなかったのだけれど、melaちゃんが一日中すごくうれしそうにわたしの顔を見るし、何度もラッキーパーソンと言われて悪い気もしなくて、どちらかというとちょっとウキウキした気持ちにもなってきて、結局、melaちゃんのラッキーパーソンがわたしだったというより、一日終わってみたら、melaちゃんが今日のわたしのラッキーパーソンになっていたのでした。まる。