<ノルウェイの森>監督・脚本:トラン・アン・ユン 原作:村上春樹


ノルウェイの森』を観に行ってきました。


できる限り、原作の小説とは比較しないで感想文を書きたいと思います。


わたしはこの映画の最初に映るシーンがとても好きです。学生服を着た直子がうしろを振り返りながら画面右から左へと歩いてくるのですが、「あ、いいな」と思いました。「男の子って変なの」という声が聞えてきそうです。


キズキ君が死ぬシーンもわたしは好きです。彼はこういう風にして周りの人を置いていったんだろうな。と思いました。


どのあたりからかわからないのですが、でもわたしはだんだん、この映画から気持ちが離れて行きました。映画の前半で、もうどうでもよくなりました。


観ているあいだはそう思っていたんです。どうでもいい。って。でも一日経って、わたしはすごく悲しくなりました。キズキ君が死んで、直子が死んで、緑のお父さんが死んで、ハツミさんが死んで、そして物語の続きを想ったとき、わたしの頭の中では、ワタナベ君が死んで、緑が死んで、ずっとそうやってみんなが死んでいく物語なんです。


ワタナベ君も直子も緑も、わたしの思い描いていた人物像とはずいぶん違うのですが、でも三人が演じた三人を、わたしは嫌いには思いませんでした。ワタナベ君を、直子を、緑を、映画の中ではこういうふうに解釈したのだなとわたしは理解できたし、そうして表現されたものを、わたしはわりと素直に受け取ることができました。


レイコさんだけ、おおきな違和感がありました。小説の中ではとても重要な役割を担っているレイコさんだから、登場させないわけにはいかなかったのかもしれないけれど、この映画の中でならいっそのこといなくてよかったんじゃないかという気がします。突撃隊もそうですね。わたしは小説『ノルウェイの森』の中では突撃隊のことが本当に大好きなのですが、この映画の中でならいなくていいという気がします。そのほうが、もっともっと、ワタナベ君と直子と緑の心模様が、くっきりと浮き上がったのではないか、という気がします。


後半好きなシーンもいくつかありましたが、でも全体的には、わたしとしてはちょっと窮屈でした。登場人物たちを映す距離が基本的にとても近くて(アップで映っている時間がとても長い)、それはたぶん、この映画がとても心情的な物語だから、観ている人の心を彼らの内面に近づけるために、物理的な距離をもまた近づけるという方法をとっているのかもしれないなと思うのですが、わたしとしてはもうちょっと離れたかった。物理的にもうちょっと離れないと、近づけなかったです。あと、セックスシーンが多いのも、わたしとしてはしんどかった。多いといっても、わたしが感じているほど多くはなかったのかもしれません。逆に言えば、実際に映された数(時間)よりも、わたしがたぶん多く(長く)感じてしまったということだと思います。わたしの隣には中学生の姉妹を連れたお母さんが三人で座っていたので、彼女たちのことが気になってしまったことも、たぶんあるのですが。


映画『ノルウェイの森』の世界からできるだけ遠くに身を置きたい。今はそう思います。


突撃隊のラジオ体操のシーンを読んだら、元気でるかな。