Lies and Truth (6th SINGLE)


わたしがラルクを好きになったのは高校1年生のときです。わたしは15歳で、あまり勉強もせず、近所のファミリーレストランでアルバイトをしていました。


そのファミリーレストランの有線から流れてきたのです。「Lies and Truth」。音楽を聴いて恋をしたのは、たぶんあのときが初めてだったと思います。わたしはhyde君の歌声に、完全に恋をしました。


わたしは誰が歌っているのかまったくわからなくて、どうしても知りたくて、慌てて先輩をつかまえて「これ、誰の曲かわかりますか」って聞きました。でも先輩は知らなくて、「けんちゃんに聞いてみたら?」と言われました。でもその「けんちゃん」という先輩は、いつも無口で、いつもうつむいていて、目もあわせたことなくて、髪の毛も長くて染めてて、ちょっと怖そうで、だからわたしは一言もしゃべったことがありませんでした。でも、誰が歌ってるのか、どーしても知りたかったんです。それで勇気を振り絞って話しかけました。


話しかけてみると、けんちゃん先輩はわりと親切で、作業中の手をとめて、スピーカーに耳をすませてくれました。それで誰の曲かすぐにわかって教えてくれたのですが、いかんせん「らるくあんしえる」というのは、聞き取りにくい。知ってる人の耳には認知できても、その名前を聞いたこともないわたしの耳には認知できない。しかも、もともと無口なけんちゃん先輩の声は小さくて、よく聞えない。アーティスト名ではなく曲名ならと思って聞いてみても、こちらも「らいざんるーす」みたいに聞える。えーん、わかんないよぉ。わたしは「もっと大きな声で、一字一句をはっきり発音してくださいっ!(泣)」とお願いしたい気持ちだったけれど、もちろんそんなことは言えません。一生懸命けんちゃん先輩の声に耳を傾けて「らる・・?らる、なんですか?」と言うので精一杯でした。


結局、その場で「ラルク・アン・シエル」とは認識できなかったんです。曲名もまたしかり。なんとなくそんなような名前、としかわからなかった。だからわたしは、けんちゃん先輩の教えてくれた「音(オン)」をできるだけそのままの響きで頭の中に記憶しようとしました。「らるくわんえる」の「らいずんんーす」って曲。というような。その時点のわたしの頭の中ではまだそんな響きでしか認識できなかったんです。


だからレコード屋さんで、たまたま店頭に並んでいたCDのタイトルを見て、けんちゃん先輩が教えてくれた「音(オン)」がよみがえったときは、ちょっと信じられない気持ちでした。その字面を目にして、見事にけんちゃん先輩の「音(オン)」が頭の中で再現されたんです。あ、これだ。って思いました。きっとそうだ、これに違いないって。「Lies and Truth」だったんだ!って。


もし違う曲だったらどうしようという思いもよぎったけれど、でも間違いない気がしたし、どちらにしても聴いてみないと確かめられないので、その場で買って帰りました。


そうして再会したのでした。
そうして初めて知ったのでした。


今、「Lies and Truth」は、ラルクの数ある楽曲の中で、わたしにとってそれほど順位の高い曲ではありません。わたしの好きなラルクの音楽性(あくまでわたしにとっての、ということだけれど)を、この曲の表現からはあまり感じることができません。でも、恋に落ちたのはこの曲です。



Lies and Truth

Lies and Truth

 再生回数250回