【スケアクロウ】the pillows(24th SINGLE)


1973年公開のアメリカ映画。ジーン・ハックマンとアル・パチーノ主演のロードムービースケアクロウ』。その映画と同じタイトルを冠した the pillows の楽曲『スケアクロウ』。


スケアクロウ=案山子。


曲の歌詞の中に「I want call you, Scare crow」とか「You can call me, Scare crow」というのがあって、はて、「キミを案山子と呼びたい」とな?「僕を案山子と呼べばいい」とな?これはいったい何ぞや? というのが、ことの始まりだったわけです。そしてどうやらこれは同名の映画『スケアクロウ』と関係があるらしいことがわかって、観たわけです。映画の『スケアクロウ』を。


もともと、とてもいい曲だと思って聴いていました。安易な言い方をしてしまえば、青春時代の恋愛を歌ったように聴こえます。ふたりで手をつないで旅を続けていこう、という歌なのです。でも映画『スケアクロウ』はジーン・ハックマンとアル・パチーノが主演の映画なので、「恋愛」とはちょっと考えにくい(あまり考えたくない、とも言える)。でもそうは言っても歌詞の中には「二人の手は冷たいけど放さないで歩いていたい」とあるわけです。


でも映画を観て、わたしは思ったのです。


そうか、これはたしかに「手を放さないで」と言ってはいるけれど、「手をつないで」とは言ってないんだよな、と。「手を放さないで」って言われたら自動的に「手をつないで」に意訳できるじゃないですか。でも、それだとこの歌の真意からずれてしまう。ここでは「手を放さない」というのは、物理的に手がつながっていることを意味するではなく、一本の棒の端と端を握るような関係を指しているのだ、と。


そう考えると、「手を放さないで」も「手を離さないで」ではないんだよなーと気づき始めるわけです。


音楽『スケアクロウ』に映画『スケアクロウ』の映像を重ねると、歌詞ひとつひとつの説得力が増します。そしてとても悲しく響きます。風景全体がもの哀しい橙色になります。
よい映画でした。悲しいけれど、わたしの好きな悲しさでした。でも、映画を観て「いい映画だったなぁ」と思うよりは、断然「なんていい曲だろう」と思う気持ちのほうが強かった。この映画にインスピレーションを得て、あるいは、この映画をリスペクトして、あるいは、ただ単純に好きで、動機はなんでもいいけれど、この映画からあの曲を構成できる視点は見事ではないかと思います。