寝る前のコーヒー


寝る前にコーヒーを飲むと眠れなくなる、とまま耳にいたしますが、わたしは眠れなくなったことはありません。いつもぐっすり健やかに安眠いたします。


まだコーヒーを飲み始めたばかりの年齢の頃、寝る前にやはりコーヒーを飲んでいたら、母親のタツコさんから「そんなもの飲んで、眠れなくなるわよ」と注意を受けたことがありました。わたしはコーヒーを飲んだくらいで眠れなくなってたまるか、絶対に寝てやると思ってコーヒーを飲み、結果、ぐっすり健やかに眠りました。


以来、コーヒーがわたしの眠りを妨げたことはございません。


しかし今日、わたしは寝る前のコーヒーに「塩」を入れてしまいました。「砂糖」と間違えたのです。
わたしはブラック派でも、ミルク派でも、砂糖派でも、ミルク&砂糖派でもなく、そのときの気分で、どれかにします。今日は砂糖だけ入れようかどうしようか迷ったのです。迷いながら容れ物を手にしたからか、「砂糖」の隣りの「塩」を手にとってしまったのです。入れたあとに閉じた容器の蓋に「塩」と書いてあるのを見て驚きました。ひゃあ、と。


「ダメかなぁ。」とクラゲに聞いたら、「ダメでしょ。」と言います。


いや、ダメなはずはない。なんとかなる。そう思って、ひとくち飲んでみましたら、ひどい味がします。しょっぱいのです。これはよくない。「コーヒーに塩が溶けた」というより「塩湯とコーヒー」を飲んでいる感じです。これではとてもコーヒーを楽しめないので、よし、こういう味のコーヒーだと思って飲んでみよう、ともうひとくち飲みます。やはり「塩湯とコーヒー」です。そこでわたしはもう一工夫こらし、よし、塩湯の部分を無視してコーヒーだけを感じて飲んでみよう、ともうひとくち飲みます。


ダメでした。工夫の甲斐なく「塩湯とコーヒー」のままです。


非常に残念ではありましが、飲みきることはできず、あとは流しに捨ててしまいました。コーヒーさん、ごめんなさい。



それからもう一杯コーヒーを入れ直して、今度は間違えずに砂糖を入れて飲みましたが、まだ塩湯は胃の中にいて、ちょっと気持ち悪いです。


それでもぐっすり眠ってやる、とアライグマは思うのでした。