タツコさんが飛行機に乗る
出発の5日前に会ったとき、タツコさんはわたしに旅程表を見せながら「ねえねえ、セントレアと中部国際空港ってどう違うの?」と尋ねたので、わたしはタツコさんが飛行機に乗るのは無理じゃなかろうかと思いました。
「そうだ、<旅のしおり>があるんだけど、うーぶちゃんもいる?」と聞かれたので
「いらない。」とお答えしました。
「なんでよ、お母さんのことが心配じゃないの?」と言うので、
「心配だけど、海の向うのことまで面倒見きれません。」と、厳しく言っておきました。
タツコさんは少し寂しそうでしたが、ひとたび海を渡ったら、日本にいるわたしは頼りにできないのだということを、認識してもらわなければなりませぬ。
さて、タツコさん出発の朝。大丈夫かなー。ちゃんと空港までたどり着けたかなー。と心配になって一応メールくらいはするのだろうと思っていたのですが、わたしすっかり忘れてて。普段通り起きて、出勤して、仕事して、帰ってきたんです。メールも電話もお祈りもなにもできないまま一日は終わろうとしていました。
そしたらピンコーン、と宅急便が届いたんです。なにも頼んだ覚えがなかったので、なんだろと思って受け取ると、差出人がタツコさん。2日前にも会ったばかりなのに?
不思議に思いながら封を開けて、中身を取り出して、笑っちゃいました。
入ってたのは、<旅のしおり>。
すっかり忘れていたことを思い出したので、メールしておきました。タツコさんはシンガポールで乗り継ぎ待ちとのこと。
タツコさんも飛行機に乗れてよかった。