<仕立て屋の恋>


監督:パトリス・ルコント

脚本:パトリス・ルコントパトリック・ドゥヴォルフ

原作:ジョルジュ・シムノン

主演:ミシェル・ブラン、サンドリーヌ・ボネール

鑑賞:朝夜君(トモヤ君。わが家のテレビの名前)

点数:65点

映イチ:アリスが階段でトマトを落として、イールに会いにきたシーン。イールはアリスの思惑に、このときすでに気がついていただろうけれど、それでもすごく、うれしかったと思う。


向かいの部屋で暮らす美しい女性アリスに恋をして、彼女の姿を覗き見することを喜びとしている中年男性、仕立て屋イールのお話です。
イールの愛に次第に心が揺れ動くアリス、と、いくつかの作品解説で目にしたのだけれど、わたしはあれは、揺れ動いていたように見える(見せていた)けれど、実はまったく揺れてさえいなかったというところを、この映画のいちばんの悲しさとして表現したのだと思っていました。どうなんでしょう。アリスはイールの愛に心惹かれたけれどそれでも、という話なのか。揺れ動いているのだと見せかけて、イールのことも観客のことも騙した、という作品なのか。


アリスはイールの愛に触れようとしているのかもしれない、そう思ったのに、実はその心は微動だにされていなかったのだと解釈したわたしは、ただただ、せめて揺れていてはほしかった、と心を痛めましたので、いくつかの作品解説が書くように、アリスの心が揺れてはいたのだとしたら、それは大変救われる気持ちがいたします。