第94回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝




ガンバ大阪 vs モンテディオ山形


3 - 1


優勝は、ガンバ大阪


試合終了のホイッスルを聞いたとき、もちろん大変悔しい気持ちになりましたが、これで今シーズンの試合はすべて終了、このチームでの試合はもう見られない、という寂しさのほうが心に大きく広がっていたような気がします。


モンテディオ山形はシーズンを通して、とても強くなりました。でもその強くなった山形よりも、ガンバ大阪は強かった。90分試合を見ていてモンテディオ山形にさほど悪いところがあったようには見えなかったし、今日、再放送を見ても、モンテディオ山形はいつもと同じ強いサッカーをしていたと思いました。それでも、ガンバ大阪には敵わなかった。大変悔しいです。
個人のレベルの違いを感じる場面もあったし、チームの総合力もきっとガンバ大阪のほうが上なのでしょう。でもそれよりも、わたしが感じた悔しさは、ガンバ大阪のプレーのひとつひとつに自信と余裕があったことです。ボールを奪われても「取り返せる」。シュートをはずしても「次は決められる」。そういう自信と余裕がそこかしこに感じられました。それはおそらく、過去に「自分たちが強かった」という経験があるからだと思います。もちろん現在(今日)の自分たちが強い、という自信も多分にあるのだとは思うけれど、現在(今日)の自分たちが強い、と自信を持つためには、過去(昨日まで)の自分たちが強かったという事実が必要です。でもモンテディオ山形にはその事実がありません。モンテディオ山形は「昨日は勝ったけれど、今日また勝てるとは限らない」、「昨日うまくできたことが、今日もうまくできるとは限らない」。でも、「だからこそ、やるしかない。」そういうメンタルで戦っています。
そういうメンタルで戦って相手の「自信と余裕」が、結果的に「驕りと油断」に様変わりする瞬間を、今シーズンのモンテディオ山形は生み出すことができるようになりました。でも、この試合でそれを見ることはできませんでした。

ただ、まったく歯が立たなかったということではなかったし、もう少し状況が違っていれば勝機も十分にあった試合だと思います。でもある状況のもとでしか勝機がない、ということは、やはり相手のほうが強いということです。残念だけれど。

でも来シーズンはきっと、こんな試合ばかりなのです。「ある状況のもとで勝機を見出すしかない」という試合ばかりになるのです。だからその勝機をきちんと手繰り寄せられるチームにならないといけません。



今年で94回を数えた天皇杯は、長く「元日の国立決勝」を舞台としてきましたが、国立競技場の改築に伴い、今大会から舞台を移しました。その結果、例年より半月も早い決勝戦だったのです。そのことは、今年J1に昇格したモンテディオ山形へのご褒美なんじゃないかと、今のわたしは思っています。今から半月先にもう1試合あったら、来シーズンへの準備はその分当然遅れていたはずです。例年よりも半月早く来シーズンへの準備が始められるのだし、しかも、来シーズンのために必要なことを、この試合を通して半月も早く、選手たち自らが身を持って知ることができたのです。


この試合が、来シーズンのスタートだったと、わたしは思っています。この試合の経験を胸にトレーニングできることは、その経験がないことと、全然違うはずです。この決勝戦の前日にわたしの腕時計が時を止めてしまったのも、その時点での今シーズンの終わりを告げてくれたのかもしれません。


黒星発進ですが、たくさんの希望が今あります。苦しいときも、この希望をぜったい捨てたりしないように、力強いサポーターを目指して、また新しいスタートです。