アナトラ君のカプチーノ


Anatra は アナトラ。日本語で鴨です。わたしと同じ年の生まれで、学年いっこ下のコックさん。


アナトラ君はコーヒーが飲めません。アナトラ君は「飲めるよ。ただ好きじゃないだけ」といいます。そのことを「飲めない」ともいうのだとわたしは思っているので、やっぱり「アナトラ君はコーヒーが飲めません」。


わたしは時間があるときに、カプチーノを作る練習をしています。カプチーノは、ほほいのさっさ、と簡単にできるものではなくて、練習が必要です。ハートの絵を描いたりします。


カプチーノを作る練習をすると、失敗したカプチーノや、わりと成功したカプチーノや、たまにはきちんと成功したカプチーノなど、質の差はあれ、練習した分だけカプチーノができあがります。全部ひとりで飲んでいられないし、そのまま捨てるのももったいないし、味も確認したいので、誰かに犠牲になって、いやもとい、試飲してもらったりします。


アナトラ君はコーヒーが飲めません。それは苦いからです。なので、砂糖を最初からたっぷり入れて、甘いカプチーノを作ることにしました。絵はうまく描けなかったけれど、お砂糖たっぷりの甘い、アナトラ君用のカプチーノができました。アナトラ君、はい。アナトラ君用のカプチーノだよ。そう言って渡しました。アナトラ君はひとくち飲んで、何も言わず、後輩のカスターニャ君にゆずりました。おれコーヒー飲めないから、と。




やっぱり飲めないんじゃん。