【COSMONAUT】BUMP OF CHICKEN(6th ALBUM)


BUMP OF CHICKEN を好きな人全員が、とっても楽しみにしていたアルバムだと思います。そして、BUMP OF CHICKEN を好きなみんなが、このアルバムを聴いて、また藤原君を愛しく思ったのではないかと、わたしは思います。


1.三ツ星カルテット

変拍子の曲は最近なかなか聴かなかったけれど、この曲の歌部分は5拍子でしょうか。穏やかで明るいイントロに始まって、だんだんと力強さが加わっていく。2分半しかない短い曲で、アルバム全体のイントロを担っていると思うけれど、その役割から解放させて聴いてみたいなと思います。


2.R.I.P.

決して嫌いな曲ではないけれど、「三ツ星カルテット」の次に聴くと、せっかくのイントロがちょっともったいなく感じます。

変わっていくのなら 全て見ておきたい
居なくなるのなら 居た事を知りたい


わたしはこの部分が大好きです。


3.ウェザーリポート

傘をさしたくなります。たぶんわたし、これからもっと雨の日を楽しみにできると思います。

車屋の前の交差点で ショーウィンドウに映る
相合傘ひとりぼっち それを抱きしめた

自分で抱きしめた

4.分別奮闘記

夢がゴミになってしまったので、不燃物の日に出したら「燃えるゴミは月曜日」。
これ燃えるのか?
今度は粗大ゴミとして出そうとしたら「普通のゴミはゴミ袋へ」。
これ袋に入るのか?

出したはずのゴミ、持って行かれてないですよ。夢のままですよ。そういう歌。

いいよね、この曲。わたしは楽しくて(ちょっとだけ切ない感じもする)好きだけど、最後の歌い上げるところはなくていいんじゃないかという気がしてしまいます。


5.モーターサイクル

『COSMONAUT』というアルバムの全体から、わたしは今までのBUMP OF CHICKENとは別の新しい扉のようなものを感じるのだけれど、その中にあって、「モーターサイクル」からは、どちらかというと今までのBUMP OF CHICKENを感じます。ああ、そうだよね。バンプってそういえばこういうバンドだったよね、という。
新しい扉はもちろん特別なものだけれど、過去につながる扉がまだあるということはわたしをほっとさせています。


6.透明飛行船

幼い頃のこと(フィクションでもノンフィクションでも)をこうして言葉にできるのは、オトナになったからなのかなとぼんやり思いました。

優しさの真似事は優しさ


7.魔法の料理〜君から君へ〜

一番、好きじゃない歌です。わたしには幼い頃の思い出を懐かしんだり慈しむ気持ちが、たぶん全然ないからだろうと思います。


8.HAPPY

シングルで発売されたときに聴いて、繰り返し聴いて、ある日聴きながら歩いて帰って来たとき、家に着いてからきっかり2時間、ひとりでわんわん泣き続けた曲です。この曲を聴いてわんわん泣いてしまう心境に当時のわたしはありました。そういう心境だったからというのは、たしかにひとつの解答ではあるのだけれど、でも今聴いてもやっぱりわたしは悲しくなるので、どうしてこの曲を聴いてそんなに泣いたんだろう、どうしてこの曲を聴くと悲しくなるんだろうと何度も考えました。

とても人を励ます曲だと思うし、勇気づける曲だと思うし、本当にとても優しい気持ちから発している歌声だと思うのです。こんな言い方どうかと思うけれど、あのときのわたしは毎日毎日泣いていて、でも心の中はびっくりするくらいカラッカラに乾いていたんです。乾いていたから苦しかった。そこにこの曲は洪水を起こしました。洪水だから、やっぱり苦しいのだけれど。

洪水を起こして、最後にこの曲はこう歌うのです。

消えない悲しみがあるなら 生き続ける意味だってあるだろう
どうせいつか終わる旅を 僕と一緒に歌おう


「どうせいつか終わる旅」はきっとポジティブな意味で使われているのだと思います。でも、そうであったとしても、それ以外のどんな意味であったとしても、わたしは、ふたりで一緒に歩いていく道の終わりをイメージしている手は握らないでいたい。その手のほうが優しくて、握っていれば少し楽になれるのだとしても、その手が終わりがあると思っている歌なら歌いたくない。歌いたくないのに、握りたくなんかないのに、もうそこにしか出口がないような気がして、扉がないような気がして、だからわたしはあのときすごく泣いたのだと思います。あのときわたしはそうではない出口を一生懸命に探していたのです。終わるとか終わらないとかじゃなくて、今わたしが歩く道を一生懸命に探していたのです。なのにそこに差し出された手があまりにも優しくて、すがりつきたくて、だから悔しくって泣いたのです。あれはたぶん、悔し涙です。たくさん悔しい思いをしました。

またどんなに悲しい思いをしても、それでもきっと握らないでいたいです。


9.66号線

曲だけ聴いてもわたしはそんなに惹かれないんだけど、だからこそ詩だけを目で追って読んだときにはびっくりしました。ずいぶん献身的なラブソング、だよね。この曲。


10.セントエルモの火

この『COSMONAUT』にはBUMP OF CHICKENの新しい扉があるように感じると上にも書きましたが、わたしはこの新しい扉を特別なものだと思うことはできても、この扉の先へどんどん進んで行きたいとは、今のところ思っていません。「HAPPY」のところで書いたことにも通じるように思うのですが、この新しい扉を進んで行くと、わたしが本当に望む道とは別の道へと進んでしまって、しかも戻ってくることはかなり困難なように思えます。一度行ったら戻れない、そういう予感がします。それくらいのエネルギーがバンプの曲にはあります。もちろんあくまでもわたしにとって、ということですが。

その中で、「セントエルモの火」は、わたしがBUMP OF CHICKENに望んでいる音楽をもっともよく表現してくれている楽曲です。楽器のメロディには不足を感じてしまうのですが、でもバンプにはこういう曲をずっとずっと作っていってほしい、こういう曲をもっともっとかっこよくしていってほしいというのがわたしの希望ではあります。「R.I.P.」以降の曲を聴く限り希望通りにはいかなさそうだなと思うようになったので、だからこの曲がここにあることはとてもうれしいです。


11.angel fall

のんびり何も考えずに、ただ曲に耳を傾けます。


12.宇宙飛行士への手紙

最初にアルバムを通して聴いたときに、この曲が一番だと思いました。今のBUMP OF CHICKENのベストはこの曲だと。

藤原君が持っている他の人にはない世界観、たぶん藤原君ただひとりの、言ってしまえばuniqueな世界観がとてもすっきりした形で歌になった、そういう詩曲だと思います。ひとりのリスナーとして少々俗な言い方をすればこの曲の表現は「大成功」だと思います。


13.イノセント

アルバム通して「唄(歌)」という単語がひとつのキーワードのように何度も出てくるのですが、そのキーワードを最後にもう一度、ここで力強く伝えているような気がします。


14.beautiful glider

この曲が最後にある。『COSMONAUT』の楽曲の充実ぶりはそれだけでわかろうというものだな、と感じます。




どの曲もとてもよくて、そのほとんどがシングル曲として出ていてもおかしくないなと思えます。わたしはバンプのアルバムはたぶん全部聴いているのですが、シングル曲以外の収録曲で、「シングルで出ていてもいいな」と思えるようなことはなかったので、わたしにとっていつもとは違ったアルバムでした。良くも悪くも、とても贅沢なアルバムです。

ただ一曲だけをとにかく聴き続けてしまうという曲も、『COSMONAUT』の中にはありませんでした。出会った瞬間に、もっかい最初から、ということがこのアルバムでは起きなかった。その意味でも、わたしにとってはいつもと違ったアルバムになりました。

メーデー」のときの高揚や「ロストマン」のときの揺さぶりをわたしは求めていて、それは叶うかどうかわからないけれど、でもあってもなくても楽しみにしたいなと思います。




COSMONAUT

COSMONAUT