オオカミクラゲ


クラゲはよく、グーとかパーで、アライグマのことを叩きます。グーでボスボス、パーでペシペシ。そうやってわたしのことを呼んでいるのかと思って、だったら口で言えばいいのにと思いながら「なに?」と聞くと、「なんでもない」って言うんです。「なんでもないの?」と聞き返すと、うんうんと首を縦に振ります。「なんでもないのに叩かないでよ」と言うと、「暇なんです」とか「手持ち無沙汰なんです」って言うんです。


ご自分の頭でも叩いていてください、とは言わずに、ほっておくことにしています。


今日もスーパーで買い物をしているときに、クラゲがペシペシ叩くのです。わたしは(なんかまたクラゲが叩いてるな、そんなに暇ならおいしそうな食材を探してきてくれたらいいのに)くらいなことを思いながら、ダンボール箱に詰まれた椎茸のパックを吟味していました。こっちがいいかな、いやでもこの椎茸は大きすぎるな、もうちょっと小さいほうがいいかな、とひとつひとつ点検していました。そしたらそのうちに、クラゲがペシペシ叩くのがだんだん強くなっていくんです。なんだなんだ、と思ったような思わないような意識で、まだ椎茸に集中していたのですが、いきなりすごく強くなって、めっちゃ痛かったから「痛いっ!!」って叫んだんです。


周りでお買い物してた人たちが、みんなわたしの声に振り返っちゃって。


「なんなの、痛いよ。」って言ったら、なるほど、わたしに見てほしかったものがあったのを、わたしが気がつかないでいたから、それを教えようとしていたのです。


そっか、気がつかなくてごめんねクラゲ。


などと、アライグマは思いませんよ。口でいいなさいよ、口で。