ひとりで考えてください


アナトラ君って、かなりダメな人なんです。


って言うと、良いところがないみたいに聞こえるから、言い方を変えておきます。かなりダメなところがある人なんです。


いつももごもご言っててなんて言ってるか聞き取れないし、名札を3回も失くすし、名古屋から新大阪までの新幹線の最終時刻をわざわざYahoo知恵袋で尋ねて、そんなことは時刻表で調べてくださいという回答をもらって落ち込んでるし、わたしにプレゼントのお返しは何がいいかって聞くから「ハンカチがいい」って答えたら、「お菓子にして」って言うし、エクセルのシートの増やし方を何度教えても絶対に覚えないし、そのくせ自分は同じことを何度も言うんです。


そして、ついには警察からのお呼び出し。


アナトラ君の落し物が警察に届けられたそうで。落し物の性質上、職場に連絡があったんです。アナトラ君不在でしたので、わたしが応対しました。お手数かけてほんとうにすみません。本人に取りに行かせます、うんぬんかんぬん。


翌日。


「アナトラ君」
「あ?」

朝一番なので機嫌がよくありません。

「アナトラ君、失くしてるものがあるでしょ。」
「。。。なんで知ってるん?」
「警察からご連絡がありました。」
「。。。」
「どなたかが拾って届けてくれたそうです。」
「そうなん!?」
「どこどこ警察署に、いついつまでに行って、受け取ってきてください。時間は9時から17時半までです。落し物番号がここに書いてあります。この番号と身分証明書を持って、2階の落し物係を訪ねて、窓口でアナトラですと名乗ってください。」
「なんでそんな南のほうに届いてるん?」
「知りません。」
「いや、おれそんなとこまで行ってへんで?」
「拾った人は行ったんです。」
「なんでそんなとこまで行くん?」
「知りません。」
「おかしくない?なんだってそんな南のほう。。。」


って、ずっと言ってるんです。



まったくうっとうしい。ひとりで考えてよ。



こないだ読んだ『御手洗潔のメロディ』にもこのセリフありましたね。御手洗潔が石岡君に向って言ったんです。「一人で考えてくれ!」って。
あっちのは石岡君がかわいそうだったけれど、こっちのはわたしがかわいそうだよね?


感想文はこれ↓
http://d.hatena.ne.jp/u-book/20150118

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

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