あなたのことは知りません。


キッチンで賄いを食べているコアラ君を呼びます。


「コアラ君」
「ほ゛い゛」


もぐもぐしながら返事をしてくれました。


「こちらが昨日から入社の方です」


昨日、おやすみだったコアラ君に新しいスタッフを紹介します。


「ああ、聞いてます聞いてます、コアラです、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」


そう挨拶を交わしながら、コアラ君はじっと彼女を見ています。


「やっぱり、全然似ていませんね。」と言うので、誰のことかと思ったら、営業中にちらりと見えた顔は、戸田恵子さんに似ていると思ったのだそう。


戸田恵子さん? それはたしかに全然似てないですね。」とわたしが言うと、
「ですね。」とコアラ君。

「スズキミキコに似ています。」と言ったのは、キッチンのスチール棚の向こうに隠れていたカスターニャ君。いきなり出てきて「スズキミキコ」と言います。



スズキミキコ?



わたしたちは三人で顔を見合わせます。でも三人ともそういう名前の有名人には心当たりがありません。



だれそれ。だれそれ。だれそれ。



聞き覚えのない名前を出したカスターニャ君に三人で顔を向けると、




「僕の友達です。」と。




。。。。。。





スズキさんのことも知りませんが、キミのことももう知りません。