重要なのは、つきあいの長さではない。
ねえ。
とキッチンからわたしを呼ぶのは、アナトラ君。
「なに?」と振り向くと、「番号教えて。」と言います。
「番号?携帯の?」
「うん。」
「知ってるじゃん。」
「携帯壊れた。」
「壊れたの!?」
「うん、これ新しいやつ。」
「買ったの?」
「昨日、おれ途中いなかったやろ?これ買いに行ってたん。」
たしかにランチとディナーの間の時間、アナトラ君は姿を消していました。でもそんなの毎日のことじゃん、と思ったけれど、そこは聞き流しました。
「それは、、大変だったね。」
「まったく、よりによってクリスマスやで?」と、心底トホホ顔のアナトラ君。
「かわいそうに。」
「やろ?ほんま、おれ生まれてこなくてよかったんちゃうかと思う。」
「ちょっとやめてよ。」
と言いながら、わたしはお皿を拭いていました。きゅっきゅっきゅっ。
「ねえ。」とまた呼ぶので、
「なに?」と顔をあげます。
「下の名前なんていうの?」
。。。。。。
アナトラ君、せっかく生まれてきたんだから、ひとまず5年も一緒に仕事しているわたしの名前、覚えてください。