イチョウ


ある朝、いつものように花園ハイツを出ると、建物の前のイチョウの木に貼り紙がしてありました。

お知らせ

皆さまに長年愛されてまいりました街路樹ですが、このたび街路樹再生指針に基づき、高木を撤去することになりました。
順次、撤去工事を行って行って参りますので、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。


なんとまあ。切られてしまうのか、このイチョウ。あるいは根こそぎにされてしまうのか。なんとまあ、なんとまあ。


「皆さまに長年愛されてまいりました」と書いてあっても、「いや、言われるほど愛した覚えもございませんが」と思うものの、この木が人間の手で大地から切り離されてしまうことを想像するとできればやめてほしいと思うので、それはやはり「愛」と呼べそうな気持かもしれません。


いつもそこに立っていた木が切られるというのは、そういうことなのでしょう。


いやしかし「撤去」ってどうするのだろうか。と思いません?イチョウですからね。作業員総出で寄ってたかってって、そんな木じゃありませんよね。切り倒すにしても、引っこ抜くにしても、どんな作業になるのか見当がつかなくて、いったいどうするんだろう、と貼り紙を見てからは毎日経過を気にしていました。そしたらある日、こうなってました。



え。うそでしょ。と言いましたよわたくし。声に出して。この世のものとは思えない、って言ったら大袈裟でしょうけれど、初めて見ると驚く。信じられなくてちょっと笑ってしまったくらいです。もうちょっと低い位置で切られていて、切株みたくなってたら「あーあ」で済んだけれど。
どうせ切るなら切株に見える位置で切ってよ、と思うものの、もちろん理由があっての高さなのでしょう。


この状態のまま、ひとつきが経ちました。
毎日、服を着ていないマネキンを見たときのような気持ちになります。